大学生の懲戒処分は甘い?戒告・停学が少なく、厳重注意ですむ理由

大学で懲戒処分がどのように決定しているか気になりますよね。
懲戒になるときは委員会などで決定されますが、一般企業や高校などに比べると「甘い処分」であることが多いです。
- 大学生の懲戒処分が甘い理由
- 大学で行っている懲戒処分を増やさない工夫
現役大学職員が感じる大学生の懲戒処分について、解説します。

大学生の懲戒処分の実態
懲戒処分に該当しそうな案件があっても、大学ではほとんどが厳重注意に収まっていると思います。不正行為や非違行為を容認しているわけではありませんが、以下のような行為の処罰が厳重注意で済むことが多いです。
- カンニング
- 代返
- ホームページから盗用したレポート
- 未成年飲酒
- 近隣住民への迷惑行為
本来であれば、戒告や停学処分になってもおかしくない行為に対する処分が甘いのには理由があります。
大学生の懲戒処分が甘い理由
教育機関なので、懲戒の基準を厳しくしてもいいのですが、実態は「甘い処分」をしていることが多いです。以下の3つの理由が考えられます。
- 処分に伴う業務が大変
- 留年者、休学者増は大学にとってマイナス
- 「自己責任」の考え方が基本
処分に伴う業務が大変
学生を戒告・停学などにする場合、学内の委員会で判断の上、学生に処分を言い渡します。委員会は複数の教員で組織されますが、忙しい教員にとっては「余計な仕事」です。
会議の日程調整、学生への聞き取りなど、秘密裡かつ慎重に判断する必要のある業務ですが、教職員への負担が大きいです。
留年者、休学者増は大学にとってマイナス
時間・労力をかけて学生の処分を決定しますが、大学にとって懲戒処分を行う学生を出すことはマイナスでしかありません。
- 4年で卒業できない留年者・休学者が増える
- 退学となっても授業料収入が減る
- ホームページでの公開・記者会見が必要(大ごとになると)
組織運営において必要な仕事ではありますが、懲戒処分は大学の評判を落とすことに繋がります(もちろん、懲戒すべき事案を隠蔽することのほうが悪影響ですが)。
「自己責任」の考え方が基本
大学は義務教育ではなく、在学生の多くは18歳以上の成人ですから、「自己責任」の考えが根っこにあります。高校生までであれば、非違行為への指導も教育の範囲内と考えられますが、大学では自己責任の考え方が強いです。
学生の行った不正行為等も自己責任と捉えているため、処分が甘くなることがあります(不正行為に関して懲戒処分はしないが、単位も与えないで完結)。
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大学で懲戒処分が増えない工夫
処分が甘い傾向がありますが、大学としても懲戒処分が増えない対策を行っています。
倫理教育の充実
大学では倫理教育を充実させ、不正行為が行われないよう、事前指導を繰り返し行っています。
- 教育に関する倫理教育(ハラスメント、カンニングの禁止など)
- 研究に関する倫理教育(論文盗用の禁止、利益相反マネジメントなど)
- 情報リテラシー教育(インシデントの共有、ヒューマンエラーの防止など)
こういった教育を毎年行うとともに、不正が行われた際に厳しい罰則(懲戒)があることを伝えています。
実際は違反しても厳重注意にとどまることが多いですが、懲戒の可能性があることを示して、ある種「脅して」いるわけです。
医師養成・教員養成課程は厳しい
大学の中で、医学部・教育学部などは比較的、厳しい処分をしています。医師や教員は、公的な職業として「高い倫理観」が求められます。
倫理観に欠ける医師・教員を輩出していると、大学側が責任を追及されることもあります。
同じカンニングでも、工学部では厳重注意、医学部では停学となった例もあるようです。
社会的影響のある案件に対しては厳しく対処
大学内での処分は甘いのですが、社会的影響のある事案に関しては厳しく対処しています。以下のような事案です。
- SNSでの女性蔑視・女性差別的な発言が炎上
- 暴力行為
- その他、著しく倫理観に欠ける行為・発言
「自己責任」が基本ですが、被害者がいる(傷つける)行為を見過ごしいると、教育者(大学)の責任を問われることがあります。
社会から注目されるケースでは、「見せしめ」かのように厳しい処分(停学や除籍)とし、大学として再発防止をアピールします。

まとめ:大学内部での事案には処分が甘い
大学での懲戒処分の決定について紹介してきました。
- 大学内部での事案では、「自己責任」の考えで重い処分にしない
- 被害者のいる事案では、教育機関として厳しい処分としている
あくまで筆者が感じる懲戒処分の傾向として理解いただければと思います。
もちろん、カンニングや代返も不正行為で、一発で停学としている大学・学部もありますので、「自己責任」の意識を持って大学生活を送りましょう。
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