卒業証明書は旧姓のみ?苗字変更があったら転職時にどうする?
結婚・離婚など、様々な理由で氏名(苗字・名前)を変更することがあります。
かつて、所属していた大学に証明書を取り寄せることもあるでしょう。その際には、変更後の氏名で証明書を発行してもらえるとは限りません。
- 卒業証明書・成績証明書は在籍当時の氏名でしか発行できない大学がある
- 戸籍抄本を提出することで変更後の氏名で証明書を発行してくれる大学が増えている。
変更後の氏名での証明書発行ができる大学と、できない大学があります。また、発行理由によって発行の可否が変わることもあります。
現役大学職員が、卒業証明書と氏名記載のルールについて解説していきます。
卒業証明書は旧姓(在籍時氏名)が原則
まず、証明書発行の原則ですが、在籍していたときの氏名・生年月日等の情報で発行しています。当時のデータに遡り、「卒業証明書」「成績証明書」などの書類を作ります。
苗字・名前が変わっている場合も、在籍後の変更を大学には知る方法がないため、当時の情報で書類を出しているのが実態です。
書類発行時に、本人確認書類の提出を求めています。
- 運転免許証
- 健康保険証
- パスポート
結婚で、氏名が変わるということはよくあるため、以下の通り確認した上で、在籍時の氏名で証明書を発行しています。
【改姓している場合の対応】
- 申請書類には在学時の氏名を記載
- 提示する本人確認書類は現在の苗字が記載されているもの
- 改姓がわかる戸籍抄本の写しも添付
- 証明書は旧姓で発行される
信州大学の情報を参考に記載していますが、多くの大学が同様の対応をしています。
卒業証明書を変更後の氏名で発行できるケース(例外)
大学が持っている情報(在籍時のデータ)以外の証明は行うことができないというのが原則です。
しかし、戸籍抄本で旧姓・氏名変更を確認した上で、新しい氏名で証明書を発行しているケースがあります。
以下のような配慮から、特例で対応されることがあります。
- 婚姻歴差別への配慮
- 旧姓嫌悪者への配慮
- 性同一性障害や性自認への配慮(特別配慮事項)
婚姻歴差別への配慮
婚姻歴差別とは、婚姻歴を理由に企業の採用・転職等で差別することをいいます。
高校や大学の卒業証明書に記載されている苗字と、現在の苗字が異なっている場合、どうしても採用側はその理由が気になります。
結婚での改姓では違和感はありませんが、離婚経験がある場合は隠したい人もいるでしょう。
「離婚経験を推測させることを避けたい」という申請者からの申し出に応じて、大学側が配慮し、変更後の氏名で証明書を発行しているケースがあります。
旧姓嫌悪者への配慮
親族からの虐待等、旧姓であった履歴を抹消したいと考えている人も世の中にはいます。
そんな人にとって、大学の卒業証明書でも旧姓を思い出すことは苦痛だと言えるでしょう。
旧姓嫌悪者などに関しては、大学が新氏名を確認し、証明書を発行できる可能性があります。
性同一性障害や性自認への配慮(特別配慮事項)
性同一性障害への配慮で、旧氏名を記載しないという配慮も行われています。
大学卒業後に、性別とともに氏名が変わったという方もいます。就職先などに、氏名変更の履歴が知られたくないという人も多いでしょう。
性同一性障害や性自認による氏名の変更者への配慮は、文部科学省が配慮を求めるよう通知を出していることもあり、大学としては新氏名での証明書を発行しているケースが多いです。
(卒業証明書等について)
指導要録の記載については学齢簿の記載に基づき行いつつ、卒業後に法に基づく戸籍上の性別の変更等を行った者から卒業証明書等の発行を求められた場合は、戸籍を確認した上で、当該者が不利益を被らないよう適切に対応すること。
「改姓後の氏名」で発行可能な大学もある
性同一性障害などの特別配慮事項以外は変更後の氏名での証明書発行を認めていないケースが多いです。
大学としては、業務量が増えることが嫌で、変更後の氏名での証明書発行を行っていないのだと思います。
一方で、東京大学などは特別配慮事項以外でも新氏名での証明書発行を認めています。
「改姓名届」という書類を出せば、理由を問わず、新氏名での証明書発行が可能になっています。
東京大学は配慮が進んでいますね。
しかし、実態としては当時の氏名でしか発行できない機関がほとんどです。
文部科学省の見解(氏名変更と証明書)
文部科学省が「高卒認定試験の合格者のQ&A」で氏名変更と証明書について、以下のように回答しています、
(問)結婚して姓が変わったのですが、証明書の発行を申請する際に何か届け出る必要はありますか?
(答) 高卒認定試験の合格時から氏名に変更があった場合は、証明書発行申請の際に変更の経緯がわかる公的書類(戸籍抄本等)を提出いただく必要があります。書類で本人の氏名変更の確認をした後に、変更後の氏名で証明書が発行されることになります。変更の経緯がわかる公的書類がない場合は証明書の発行ができません。また、証明書の申請用紙には、変更後の氏名を記入してください。外国籍の方は、文部科学省に連絡し てください。
文部科学省も証拠書類(戸籍抄本)の提出をもって、変更後の氏名での証明書発行を行っています。今後は、変更後の氏名での証明書発行が行われるようになっていくと思われます。
転職時に名前が変わっている場合は?
転職時に卒業証明書が求められている場合も、原則に従い、多くの大学では在籍時の氏名での発行となります。
特段の理由がない場合、学部へ旧姓での発行を依頼しても断られるケースがほとんどです。
「婚姻歴差別の配慮」を依頼しても、発行までに時間がかかるケースが多いです
現実的な対応策としては、転職先の企業に「戸籍妙本と氏名変更前の卒業証明書」を提出して本人確認を行うのが良いでしょう。
近年は性別やアイデンティティに関する制度変更が積極的に行われているため、数年後には改姓後の氏名で証明書を発行できるようになるかもしれません。
公務員や国立大学などの公的機関が就職先の場合、証明書の提出が求められますが、民間企業であれば証明書の提出を求めていないことも多いですね。
まとめ:旧姓での証明書発行の可否は大学による
卒業証明書・成績証明書と氏名変更について解説してきました。
- 性同一性障害等の特別配慮事項に関する変更は多くの場合、認められる
- 結婚など一般的な理由による変更は、認められないケースが多く、
発行には戸籍抄本の提出が必要 - 在籍時の氏名での発行しか認めていない大学もある
変更後の氏名での証明書を発行していない理由は、かつての在籍情報と氏名変更の情報を大学が保持したくない(個人情報保有リスクを避けたい)という点が主なものです。
どうしても改正後での氏名での証明書発行が必要な場合は、大学の学部だけでなく、本部の大学教務課にも問い合わせをすると対応が変わるかもしれません。
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大学・教務課へのメールは以下の記事に例文を載せています。