教育実習・介護等体験の代替措置の現状(令和5年3月現在)

教育実習
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令和2年の新型コロナウイルスの流行以来、教員免許取得に必要な教育実習・介護等体験は代替措置での対応が可能になっています。

【参考】文部科学省 教員の免許、採用、人事、研修等

3年以上がたった令和5年3月になっても、代替措置での対応が可能と文部科学省が通知を出しています。実際、令和4年度以降に教員免許を取得するために、学生はどのような対応をとっているのでしょうか。

本記事の結論
  • コロナ関連の特例措置はあるが、基本的に教育実習は行う必要がある
  • 介護等体験は施設に行くのが困難なため、レポートなどの代替措置を行っている
  • 「介護等体験はいらない」という意見もあるが、恐らくなくならない

教育実習はほぼ従来どおりに行われており、介護等体験は教材利用の代替措置が取られています。

ダイマナ
ダイマナ
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    教育実習の内容と代替措置

    教室

    まず、教育実習の基本的な事項ですが、「中学校の第一種免許を取得するためには3週間、高校の第一種免許を取得するためには2週間の教育実習に行く」必要があります。

    中学・高校両方の免許を取得するためには教育実習を中学・高校どちらで行ってもいいというルール(その場合は3週間以上)や、より長い期間の教育実習を求めている大学もあります。

    教育実習の代替措置

    (1)教育実習の実施に関する特例
    新型コロナウイルス感染症の影響により、大学等が令和2年度から令和4年
    度までの間に教育実習の科目の授業を実施できないことにより、教職課程を置
    く各国公私立大学、各指定教員養成機関(以下「大学等」という。)に在学す
    る学生又は科目等履修生が教育実習の科目の単位を修得できないときは、課程
    認定を受けた教育実習以外の科目の単位をもってあてることができる
    ことと
    すること。

    中略

    教育実習特例は真にやむを得ない場合にのみ活用することとし、また、教育実習特例を活用する場合やイ、ウによる場合においても、新型コロナウイルス感染症の状況に十分注意しつつ、学生が学校教育の実際を体験的、総合的に理解できる機会(例えば学習指導員としての活動等)の活用を積極的に促進することが期待されること。

    文部科学省】教育職員免許法施行規則等の一部を改正する省令等の施行について

    非常に長い通知を文部科学省が出しています。

    要点をまとめると、教育実習は教員免許取得に非常に重要な機会のため、原則「従来どおりに行う」としています。

    一方で、コロナにより、教育実習校が休校になった場合や学生がコロナ・濃厚接触者になった場合に備えて、代替措置を用意することを文科省は求めています。

    実際に、令和3年度には下記のような対応となったことがありました。

    • 実習先の中学校でコロナ感染者が出てしまい、教育実習は9日間のみになったため、残りをレポートで対応。
    • 実習学生が発熱してしまったため、別日に大学の附属中学校で1週間の代替実習が行われた。

    代替措置を利用した学生もいましたが、90%以上の学生が従来どおりの期間、教育実習を終えています

    介護等体験の内容と代替措置(レポート)

    介護施設
    介護等体験は5日間社会福祉施設で、2日間特別支援学校で行うことを文部科学省が求めています。

    介護等体験の具体的な内容
    • 「社会福祉施設」(2日間の実習)は、障害者施設や老人ホーム等です。介護が必要な方が過ごす施設で、障害や病気との向き合い方を学びます。
    • 「特別支援学校」(5日間の実習)は、心身に障がいのある学生を教育する施設です。実際に教員になった際にも障がいを持った子を受け待つ可能性はあり、専門に受け入れている特別支援学校での体験を求めています。

    介護等体験に関しては、障がいがある方が生活する施設に行くことが前提になっているため、感染症の影響がより深刻に考えられています。

    文部科学省は、教育実習と比べて、簡単に代替措置の適用ができるようにしています

    介護等体験の代替措置(令和5年2月通知)

    介護等体験を免除する者として、令和2年度から令和5年度までの間において介護等体験を行うことを予定していたにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により介護等体験を行う施設における受入れが困難な状況にあることその他これに類する事由により介護等体験を行うことが困難な者であって、次のアからキまでのいずれかに該当するものとしたこと。

    中略

    エ 在学する大学等において、令和5年度までに、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が開設する免許法認定通信教育の科目に係る印刷教材の学修の成果を確認する措置を受けた者

    【文部科学省】教育職員免許法施行規則等の一部を改正する省令等の施行について

    様々な代替措置が想定されていますが、印刷教材による学修の成果を確認で代替措置としている大学が多いです。全ての代替措置は上記、文部科学省の通知を参考にしてください。

    【具体的な代替措置内容】

    定められた視覚障害・聴覚障害いずれかのテキストを購読し、1500字程度のレポートで報告することで、介護等体験の代替措置とできることにしています。

    (厳密には、やむを得ず代替措置を行うという申請を学生がして、レポート内容を大学で承認する流れですが、ほぼ100%の学生が代替措置で対応しています。)

    7日間、学外での実習を行っていたことを考えると、学生の負担は少なくなったと言えます。

    社会福祉施設や特別支援学校に感染症を持ち込む危険性はできるだけ排除したいという文部科学省の考えがあるのでしょう。

    代替措置への大学の取り組み

    令和2年度は、教育実習の受け入れを中止する中学・高校が多く、大学は対応に追われました。

    大学に教員養成の課程(教育学部等)がある場合は、教育学部で対応方針を決め、他の学部で教員免許を取得する学生も同様の対応としています。

    一般的には、教育学部では90%以上の学生が教員免許を取得しており、文学部や理学部などの学生で5〜10%の学生が教員免許を取得するというイメージです。

    教員養成課程がある大学では附属の中学・高校を設置している大学があります。姉妹組織となるため、大学から附属学校へ協力依頼が出され、母校で対応できなかった学生への代替措置(救済措置)を行っていました。

    「埼玉大学」の教育実習生を「埼玉大学教育学部附属中学校」で受け入れるようなケースです。

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    教育実習・介護等体験はいらない?目的はなに?

    介護等体験
    教育実習・介護等体験の代替措置が可能となった時に、多くの学生が考えているのは、そもそも「教育実習・介護等体験」はいらないのでは?ということです。教員になった際の職場である学校での実習は必要でも、「介護等体験はいらない」と考えている学生が多いのが実情です。

    実際に文部科学省の通知では、「希望者は介護等体験をしても良い」となっていますが、大学内で1人も希望する学生がいなかったこともありました。

    そもそも介護等体験の目的は、「個人の尊厳」と「社会連帯の理念」に関する認識を深めることです。

    教員が個人の尊厳及び社会連帯の理念に関する認識を深めることの重要性にかんがみ教員の資質向上及び学校教育の一層の充実を図るため、小学校及び中学校の教諭の普通免許状取得希望者に介護等体験が義務付けられています。

    「障がい者・ダイバーシティ人材への配慮」「教員から学生への暴力事件」等が多く報じられるなど、現場経験と多様性への理解の重要性は増すばかりです。

    コロナ禍が続いても、教育実習・介護等体験がなくなるということはないでしょう。

    教員を志望する学生は、介護等体験を受けていない中でも、適切な考え方を採用面接などで示せる必要があります。介護等体験の代替措置のレポートを書く方は以下の視点で書いてみると、理解が深まるでしょう。

    • 障がいを持った学生の指導にどう活かすか
    • 障がいを持った方と交流した経験があるか、その時にどのように考えたか
    • 性的志向に悩みを持った学生から相談されたらどのように対応するか
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    まとめ:介護等体験はレポートでの代替措置が主流

    令和5年度、教育実習は多くの学生が規定の期間行っていますが、介護等体験に関してはほとんどの学生が教材利用の代替措置で終えています。

    現場での介護等体験が減ったことをラッキーだと考えている学生は多いでしょう。

    障がい者教育などは、これまでに増して重要になってくるでしょう。現場を体験していない学生が教員になることが教育現場の質低下につながらなければと教育者は懸念しています。

    介護の実体験は難しいですが、教材などを読んで、多様性(ダイバーシティ)に対しての理解を深めておくことは欠かせません。

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