【大学の合格取消の事例】教員からの入学取消依頼!入学辞退との違いは?

大学に長年勤めていると、学生の受け入れを巡って様々なケースがあります。
滅多にありませんが、教員から学生を「入学拒否にしたい」と相談を受けた事例がありましたので、紹介します。
- 合格取消・入学取消は滅多にない
- 合格取消理由は「カンニング」「虚偽申告」「刑罰」等
- 教員側から入学取消を申し出た事例を紹介
海外から日本の大学院への留学生で、合格後にコロナで入学時期が遅れ、その間、予定指導教員と馬が合わず、結果としては、学生が入学辞退することとなりました。

入学取消・合格取消とは?カンニングや虚偽申告で

「入学取消・合格取消」は、大学の試験等に合格した学生に対して、入学の拒否を大学から申し入れることを言います。
試験に合格しているため、大学での審査は通過しているはずですが、後に「入学拒否」とする例があります。合格取り消しになる理由は以下のようなものがあります。
- 試験によるカンニングが発覚した場合
- 出願書類に重大な嘘があった場合
- 試験合格後に刑罰等を受けたことが発覚した場合
カンニングや虚偽申告、逮捕等、入学者に適しないと判断した場合、入学許可を取り消すことがあります。所属学生が行ったら「停学」になる相当のことがあると、取り消しになると考えるとわかりやすいです。

「入学者の決定」という重大な判断をする場合、教授会などの会議で審議され、合格者が決定します。入学を取り消す場合も同様に、教授会等の会議で審議を行います。
学生個人に関することで、入学許可を取り消すことはあっても、大学都合で入学許可を取り消すことはまずありません。
めったにない事例ですが、教員側の申し出によって、入学取消が進められた事例がありました。
事例:教員側が入学取消を希望した

入学取消を申し出た経緯は以下のとおりです。
学生:大学院に研究生として入学希望
状況:コロナの影響で入学時期を1年延期(入学料・授業料支払い済み)
※コロナ禍の特例で、渡航が困難な場合、一度合格した学生の入学時期をずらすことが可能になっていました。
入学時点で指導教員が決まっていたため、入学延期期間中に就学前指導を受けていました。
指導教員の考え:学習意欲不足のため、入学取消としたい
学生が、就学前指導の課題の不提出や度重なる連絡無視があったため、教員から教務課窓口に相談がありました。
「学習意欲が感じられないため、入学を拒否したい」というのが教員の申し出でした。学生に問題があるにせよ、教員側から入学拒否の申し出は前代未聞です。
大学の対応:一度入学を許可した学生を「入学拒否」できない
大学として、会議で認められた入学を取消すことは相応の理由がなければなりません。今回のケースでは、入学前の学習意欲に関するものです。
「学習意欲」は入学後に上がれば問題ないので、入学前の意欲で、入学を取消すことは難しいというのが大学の見解となりました。学生本人の意思で入学したくないというのであれば、「入学辞退」として、コロナの特例もあり入学金・授業料の返金も可能です。
ただ、大学から入学拒否はできないという考えです。一度、合格を出している以上、重大な理由がなければ取消すことはできません。
学生の希望:指導教員の変更を申し出るも、担当できる教員がいない
指導教員と学生間でやり取りをしていても埒が明かないため、教務課から学生に連絡を取ることにしました。
指導教員とのやり取りの中で、ウマが合っていないことを学生も感じているため、指導教員の変更を申し出てきました。大学事務としては、入学者が指導教員を変更することについて、指導教員間で連絡が取れていれば差し支えありません。
しかし、大学内には希望する研究内容を適切に指導できる教員が他にいませんでした。
希望する研究内容を指導する、指導教員の変更も難しい旨を事務から説明したところ、学生から入学辞退の意思表示がありました。
結果として、学生自ら「入学辞退」の申し出がありましたので、大学から「入学取消・合格取消」とはしませんでした。
客観的に見ると、「大学側の都合で入学を断った」ともとられることもあるため、学内での重要報告事項となり、就学前指導の内容が見直されることとなりました。
「入学取消」「入学辞退」「入学手続未了」の違い

「入学取消」と「入学辞退」という言葉が出てきましたので、用語の違いについて整理します。
- 入学取消・・・大学側から、入学許可を取り消すこと。「合格取消」も同義
- 入学辞退・・・学生が入学手続期間中に、入学を辞退すること
- 入学手続未了・・・学生が連絡をせずに、入学手続を終了しないこと
「入学取消」は、大学側から入学許可を一方的に取り消すことですから、ほとんどありません。
合格を出した後、入学手続をして、辞退可能期間中に辞退連絡をすれば「入学辞退」。
合格を出した後、入学手続をせずに、入学手続期間を終えれば「入学手続未了」。

まとめ:入学取消・合格取消は滅多にない
大学が「入学取消・合格取消」を行うことは、ほとんどありません。
カンニングや虚偽申告など重大な悪質な事由があった時のみ、教授会などの審議を経て「入学取消」となります。
今回は、指導教員と馬が合わず、指導教員の変更も適わず、学生の意思で入学辞退になったケースを紹介しました。学生としては一度合格しているので、入学することも可能であったでしょう。
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