大学の非正規生とは?研究生・委託研究生・特別聴講学生・特別研究学生
大学には必ずしも4年間通う必要はありません。
半年から1年程度、大学に通う「非正規生」(非正規学生・非正科生も同じ)という制度があります。
- 研究生・・・
特定の専門事項について研究する身分 - 委託研究生・・・
公共機関等からの学生委託の願い出により研究する身分 - 特別聴講学生・・・
他の大学との協議に基づき授業を履修する身分 - 特別研究学生・・・
他の大学院との協議に基づき研究指導を受ける身分 - 科目等履修生・・・
一又は複数の授業科目を履修する身分
※千葉大学のホームページより
大学に非正規生として通う方法と入学料・授業料などについて解説します。正規生との違いがわからない方は、こちらの記事から読んでいただけるといいでしょう。
非正規生の一覧
非正規生の一覧を作成しました。全て、半年から1年の期間で在籍することが多いです。大学によっては、違う名称で似たような非正規生を認めている場合もあります。
非正規生の名称 | 対象者 | できること | 学費 |
---|---|---|---|
研究生 | 学士取得など | 研究指導を受ける | 必要 |
委託研究生 | 公的機関職員 | 研究指導を受ける | 必要 |
特別聴講学生 | 協定校の大学生 | 授業の履修 | 不要が多い |
特別研究学生 | 協定校の大学院生 | 研究指導を受ける | 不要が多い |
科目等履修生 | 高卒など | 授業の履修 | 必要 |
- できることは、「授業を履修する」か「研究指導を受ける」
- 協定校で取り決めがあれば無料だが、基本的には学費がかかる
- お金を払えば誰でも非正規生になれるわけではない
正規生に比べると、非正規生になるのは簡単ですが、誰でもなれるわけではありません。
非正規学生にも学生証が交付され、施設を利用できるようになるため、怪しい人を入学させるわけにはいきません。
研究生とは:特定の専門事項について研究
研究生は、特定の専門事項について大学教員のもとで研究する非正規生です。
【研究生となる例】
工学部を卒業し、社会人として技術職で働いていたが、専門性を深めるため、短期的に大学で研究を行う。
外国の大学・大学院を卒業し、より専門性を深めるため、日本の大学の研究生になるパターンもあります。研究生になる場合は、予め大学教員と連絡をとり、研究指導の事前承諾を得るのが基本的なパターンです。
- 入学願書
- 履歴書
- 最終学校の卒業証明書
- 検定料
研究生に出願するのに必要な書類は主に上記になります。前期の研究生は2月に、後期の研究生は8月に書類を提出する必要があります。
参考までにある国立大学の研究生として必要な学費は以下のとおりです。
- 検定料 9,800円
- 入学料 86,400円
- 授業料 173,400円(半期)
委託研究生とは:公共機関の委託で大学で研究
委託研究生は、公的機関所属職員が大学で研究を行う非正規生です。
【委託研究生となる例】
都道府県に所属する教員が、スキルアップを目指して大学教育学部の委託研究生となるケースが多いです。
公共機関職員のスキルアップのために行われ、主に教育・教員の分野での非正規生が多いです。
委託研究生になる上で必要となる書類や学費は、研究生とほとんど一緒です。
追加で必要なのは「公的機関が委託を承諾する書類」くらいでしょう。
委託研究生に関しては、大学と都道府県の協力で行われている制度のため、研究期間や授業料等に関して、柔軟に対応していることも多いです。
特別聴講学生とは:大学間協定にもとづき授業を履修
特別聴講学生は、大学間交流協定に基づいて授業を受講する非正規生です。入学料や授業料が免除になるケースが多いです。
【特別聴講学生となる例】
日本の大学と外国の大学で交流協定を結んでいる場合、無料で協定大学の授業を受けることができます。学生の海外留学を推進するため、特別聴講学生として協定校の学生を受け入れています。
交流している大学間で、互いの大学に学生を派遣しあっています。
大学間で協定を結んでいれば、互いの大学の授業を無料で受けることができるようになります。
海外とだけではなく、国内の交流協定もあります。
例えば、国立六大学(千葉大学・新潟大学・金沢大学・岡山大学・熊本大学・長崎大学)は交流協定を結んでおり、定められた授業を特別聴講学生として受講することができます。
特別聴講学生として受講した授業には「単位取得証明書」が発行され、単位を修得できますが、卒業要件に含まない単位となることも多いので、確認が必要です。
特別研究学生とは:大学間協定にもとづき研究
特別研究学生は、大学間交流協定に基づいて研究指導を受けることができる非正規生です。入学料や授業料が免除になるケースが多いです。
【特別研究学生となる例】
大学院生として、海外で研究を行っている学生が交流協定のある日本の大学に「特別研究学生」として留学します。
教授同士が交流がある場合、学生を派遣しあって研究内容を深めています。
研究指導を受けるのが特別研究学生なので、大学院生のみにある非正規生です。
特別聴講学生と同様、協定があれば無料で研究指導を受けることができます。
「研究生」として他大学で指導を受ける場合は、半期でも数十万の学費がかかりますので、学生にとっては非常にお得な制度です。
科目等履修生とは:大学の授業科目を履修
科目等履修生は、大学が開設する授業を受講できる非正規生です。
【科目等履修生となる例】
大学の授業に興味をもった卒業生や一般人が出願することで、大学の授業を受けることができる。
大学によっては、科目等履修生の受入を卒業生や関係者に限定しているケースもありますが、授業料収入を得るために、一般市民に広く開講している大学・授業も多いです。
参考までにある国立大学で科目等履修生として必要な学費は以下のとおりです。
- 検定料 9,800円
- 入学料 28,200円
- 授業料 14,800円(1単位あたり)
科目等履修生については、下記記事でも詳しく解説しています。
社会人になってから教員免許を取得するために、卒業した大学の科目等履修生となって教職課程に必要な単位を修得する学生もいます。
非正規生の入学や退学の取り扱い
非正規生になるときは「入学許可証」が大学から発行され「入学」します。通常であれば、所定の期間を終えて、非正規生の期間が「終了」となります。基本的に「卒業」は用いません。
何らかの理由で、非正規生を途中で終了する場合はその旨、教務課等の大学事務に届け出ることで、「退学」または「期間短縮」として、終了が認められます。
大学窓口に「退学届」の提出を求められた場合は「退学」、口頭や正式な書類の提出を求められなかった場合は「期間短縮」の手続きが取られたことになります。
退学となった場合は「退学許可証」が発行されますが、期間短縮の場合は特に、本人へ書類が発行されることはありません。
【参考】
特別聴講学生など、授業料無料で入学している場合は、「退学」「期間短縮」どちらでも問題ありません。在学期間で授業料の金額が変わらないためです。
一方で、研究生など毎月の授業料が発生している場合は「退学」で手続きするのが適切です。研究生も特別聴講学生同様、研究期間を定めて入学しますが、研究生の場合、入学時に在学期間に応じた授業料を支払っています。
期間短縮で、本人に適切な書類が提出されないと授業料の返還の手続きも行うことができません。「退学」として、退学許可証が出されれば、それに応じて残りの授業料の返還の手続きが行われます(期間を残して退学した場合に、一定の授業料が返還される場合と、返還されない場合がありますので、大学窓口に確認しましょう)。
まとめ:非正規生として大学に入学する方法がある
大学には非正規生として入学し、授業を受けたり、研究を行ったりすることができます。
- 研究生・・・特定の専門事項について研究することを志願するものがあるとき、授業及び研究に支障のない限り、選考のうえ、入学を許可するもの
- 委託研究生・・・公共機関その他から、その所属職員について、学生委託の願い出のあるとき、授業及び研究に支障のない限り、選考のうえ、入学を許可するもの
- 特別聴講学生・・・他の大学又は外国の大学との協議に基づき、当該大学の学生の入学を許可し、本学が開設する授業科目を履修するもの
- 特別研究学生・・・他の大学院又は外国の大学院との協議に基づき、当該大学院の学生の入学を許可し、本大学院において学位論文の作成等に対する研究指導を受けるもの
- 科目等履修生・・・本学(学部・大学院)が開設する一又は複数の授業科目を履修することを志願する者があるとき、授業に支障のない限り、選考のうえ入学を許可するもの
※千葉大学のホームページより
受講したい授業がある場合や研究を深めたい分野がある場合、卒業した大学の情報を集めるのもいいですし、学びたい研究分野の教授を探して、アプローチするのもおすすめです。
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