大学の教務課・学務課・学生課とは?違いを現役職員が紹介
大学には似た名前の組織が多いです。
「学務課」「教務課」「学生課」「学生支援課」など似たような名前が多いですが、どこも学生のサポートを行っている部署です。
扱う業務の違いで部署を分けている大学もありますが、基本的な仕事内容は一緒です。
本記事では「教務課」という呼び方で統一します。
- 「学務課」「教務課」「学生課」の細かな違いを紹介
- 大学により部署の名前が異なるが、学生をサポートする組織
- 具体的な教務課の仕事内容を紹介
大学の教務課の行っている仕事内容について、現役大学職員が11項目に分けて詳しく紹介します。
大学の教務課・学務課とは?
大学の教務課(学務課)とは、「入学・授業履修・成績・卒業・正規生の管理・非正規生の管理・資格取得・授業料・留学・就職・課外活動」などに関して、学生をサポートする組織です。
大学で授業を担当したり、入試の問題を作成したりするのは教授をはじめとする、大学教員です。
学生指導や研究、学会発表で忙しくしている大学教員だけでは、学生の活動全てをサポートすることができません。
大学では、教務課(学務課)という窓口を設けて、教員とは別の事務職員が学生のサポートを行っています。
教務課と学務課の違いは?
「教務課」と「学務課」に扱う業務などに違いはありません。大学で組織につけている名前が異なるだけです。
ちなみに、「学務」「教務」という用語には若干の違いがあります。
- 「学務」・・・学校・教育に関する事務(例:学務情報システム)
- 「教務」・・・学校での授業に関する事務、宗教関係の事務(例:教務主任)
ほぼ同じ意味で用いられますが、「教務」の場合、宗教関係の事務を含みます。また、小中学校で教育事務の統括を行う役職は「教務主任」と呼ばれ、「学務主任」という役職はありません。
学務課と学生課の違いは?
大学の多くは「学務課」と「学生課」で別の業務を担当しています。
大学によっては「学生課」「学生支援課」「学生サポート課」などとしていることもあります。
- 学務課・教務課・・・
授業履修・成績・卒業など主に学習をサポートする - 学生課・学生支援課・・・
サークル活動・留学・奨学金など主に課外活動をサポートする
カリキュラムや授業のことは学務課、サークル活動や授業料のことは学生課、とざっくり分けることができます。
※どちらの業務も一つの課が担当している大学も、細かく分かれている大学もあります。
大学の学生サポート組織
学生数の多いマンモス大学だと、さらに細かく学生窓口が分けられています。
一例として、東京大学の「学生相談窓口一覧」を紹介します。
- 本部学生支援課・・・学生団体の表彰など
- 本部奨学厚生課・・・入学料・授業料の免除など
- 学生相談支援課・・・キャリア相談・就活支援など
- 本部国際支援課・・・留学生のサポートなど
- 本部国際交流課・・・国際交流プログラムの策定など
- 教養学部等学生支援課・・・証明書の発行、駐輪の登録等
- 各学部の学務チーム、教務課・・・学部や大学院の授業相談など
「学務」も「教務」も「学生支援」もほぼ同じ意味で使われています。国際交流や奨学厚生の部署は、わかりやすいように別の名前がつけられています。
どこの大学も名前は違えど、同じような部署で学生サポートの事務組織があります。
大学の学務関係業務の流れ
大学職員の組織は「大学本部」と「学部・大学院(部局)」に分かれます。
各学部で集まった学生の情報などを最終的に、大学本部で取りまとめて、書類の一括発行やデータ分析を行っています。
複数の学部がある大学では、各学部・大学院ごとに窓口を設けて、情報を集めて、本部に集約するということを行っています。大学生のみなさんが関わるのは、各学部の窓口です。
学部の窓口となっているのが、「教務係」や「学務チーム」などの組織です。
教務課・学務課の仕事内容
大学生の相談窓口となっているのが、教務課・学務課で「学生サポート」を行っています。
具体的な仕事内容は、「入学・授業履修・成績・卒業要件・正規生の管理・非正規生の管理・資格取得・授業料・留学・就職・課外活動」の11種類に大きく分かれます。
11種類の仕事の具体的な内容を「大学教員がやる仕事」「教務課の事務職員がやる仕事」に分けて紹介していきます。
仕事内容は関連記事をリンクで紹介しています。
学生の入学・入試に関すること
- 試験科目・試験時間の決定
- 入試問題の作成
- 入試当日の試験監督
- 入試の採点
- 決定した出願要項の作成
- 出願書類の受付
- オープンキャンパスや入試説明会の準備
- 入試当日の学生誘導、答案取りまとめ
- 合格者発表準備
大学では、一般入試の他に、AO入試や総合型選抜などもあり、入試があるごとに準備を行っています。高校卒業後に受ける入試の他に、編入学・再入学・飛び入学という制度もあります。
入試問題の作成や採点・面接官などは大学教員が行いますが、試験会場の設営や出願書類の確認などは事務職員の仕事です(入試課などの部署がある大学も多い)。
授業・履修に関すること
- 授業を担当する
- 授業シラバスを作成する
- 履修に関する専門的な相談を受け付ける
- 履修に関する一般的な相談を受け付ける
- シラバスや履修登録が反映されているか確認する
- 教室の管理、休校等の学生への伝達
授業を担当するのは、大学教員ですが、学生サポートを教務課で行っています。
シラバスや履修登録は大学の教務情報システムに登録されています。
システムの使い方や履修登録に関する相談を受けるのは教務係で、専門的な授業内容等については教員につなぐことにしています。
また、授業に関する先生への不満の相談受付や、休校案内の学生への伝達、公欠書類の受付など業務は幅広いです。
成績・テストに関すること
- テストを行い、成績をつける
- テスト・レポートの採点
- 成績に関する相談受付
- テスト期間の設定
- 全ての成績がつけられているかの確認
- 授業ごとに成績の基準が大きく異ならないか確認
授業を担当する先生がテストやレポートの課題を出し、成績入力を行いますが、教務課にも仕事があります。
主な仕事としては、テストが終わった後、全学生の成績を全教員がつけているかを全ての授業で確認することです。
また、成績が開示された後には、学生から「なぜ、不可になったか教えて欲しい」というような相談を受けることもあります。
卒業・学位に関すること
- 学生への論文指導・成績入力
- 卒業論文発表会などに参加
- 教授会など会議で卒業に関する審議
- 卒業要件単位数の確認
- 学位記の発行
- 学位記授与式の準備
大学を卒業するための単位を学部・学科(大学院)ごとに決めています。学生が卒業要件を満たしているか、一人ひとり教務課で確認して、学位記を発行します。
システムで卒業要件に合致する学生を抽出できますが、「入学年度」「留年」などにより、卒業要件が変わることがあるため、最終的にはアナログな確認をしていることも多いです。
また、卒業式とは別に、卒業生全員に学位記を渡す「学位記授与式」がありますが、式典の準備も教務課で行っています。
正規生の管理に関すること
- 正規生の授業・研究指導
正規生とは、複数年かけて学位を取得する大学生のことで4年または6年(医学部、薬学部)の教育課程を経て卒業する学生です。最低でも4年間大学にいることになるので、大学生の状況をシステム上に入力しています。
休学や停学の申請を受け付けたり、進級要件を確認したり、証明書の発行も行います。
非正規生の管理に関すること
- 非正規生の授業、研究指導等
- 留学生の場合は、先方大学との連絡
- 退学・単位修得等の事務手続き
- 学生の在学区分のシステムへの登録
- 各種証明書類の発行
非正規生は、特定の授業を受けたり、研究を行うために、在籍する学生のことです。基本は1年程度、長くとも2年ほどで修了する学生がほとんです。
特定の授業を履修できる「科目等履修生」、大学教員のもとで研究を行う「研究生」などがあります。
正規生と同様に、非正規生もシステムに入力を行ったり、証明証の発行を行ったりもします。
教員免許など資格取得に関すること
- 授業を行い、成績をつける
- 制度変更など重要な決定を行う
- 学生への資格取得要件の周知
- 資格取扱団体と大学生の情報伝達
- 教育実習、介護等体験参加の取りまとめ
大学で、一定の単位を修得することで得られる資格があり、教務課でサポートを行っています。
大学で取得できる資格の代表的なものに、教員免許、学芸員、司書などがあります。
資格に応じて、授業名・修得単位数が決められており、要件を満たせば資格が取得できます。
教員免許の取得には「教育実習」、学芸員の資格には「博物館実習」の受講が必要で、実習の取りまとめも教務課の職員が行っています。
授業料に関すること
- 学生からの個人的相談受付
- 入学料、授業料支払いのお知らせ
- 授業料免除の手続き
- 奨学金給付のサポート
- 休学、退学時の授業料の変更
授業料の支払いが難しい学生には、授業料免除や奨学金給付が行える場合があります。
授業料に関するサポートに加え、休学期間は授業料の支払いが免除されるため、引き落としを止める手続きなどをします。
大学によっては、経理や会計の部署が授業料に関するサポートをしている場合もあります。
留学に関すること
- 研究室での留学生の受け入れ
- ゼミ学生の留学支援
- 協定校の開拓
- 留学生・在学生からの問い合わせ窓口
- 留学生の就学サポート・情報提供
- 留学希望学生への情報提供
日本国内の少子化が進んでいる中、大学は留学受入・留学派遣に力を入れています。
大学に来ている留学生に英語や中国語で案内をしたり、入国後の各種手続きのサポートを行っています。
外国人が滞在する際のゲストハウスなどの紹介を行うこともあります(留学生課・国際課などの部署を設けている大学もあります)。
就職に関すること
- ゼミ学生の就活支援
- 就職先の斡旋(教員と企業に繋がりがある場合)
- 就職関連セミナーの開催
- 就職情報の提供
- 就職活動書類のチェックと面接対策
就職に関するサポートは事務職員の仕事で、企業の人事担当者と打ち合わせをしたり、学生のエントリーシートのチェックなどの支援を行うこともあります。
学部ごとの教務課ではなく、大学の中に就職をサポートする部署が設置されていることが多いです。
課外活動に関すること
- 部活やサークルの担任(形式上)
- 活動の認可
- 学内施設・備品の貸出
- 活動支援金の拠出
部活動やサークル活動など、授業以外の活動を課外活動といいます。学内の部活やサークルで使う設備や備品の管理や活動支援金の支給を事務職員が行っています。
カルト宗教等を排除するため、キャンパス内のチラシ掲載を許可制にしており、運営団体や掲載内容のチェックも行っています
課外活動に関しても、学部ごとの教務課ではなく、大学の中に就職をサポートする部署が設置されていることが多いです。
教務課・学務課の仕事の繁忙期
教務課(学務課)の仕事は2月〜4月頃が繁忙期になります。
年間を通して、満遍なく仕事がありますが、大学生が春休みに入っている期間が1番忙しい時期に当たります。
- 入試、合格発表、入学手続
- 学生の進級判定、卒業判定
- 卒業式、入学式、入学生ガイダンス
- 新年度開始に伴うシラバス・授業カレンダー等の準備
特に、4月から新たな学部が増えたり、新たな学生サービスを提供することが重なると土日も出勤しなければならないほど忙しくなります。
大学生が休んでいる間に、教務課の職員は次年度の準備をしています。
教務課・学務課以外の大学職員の仕事
教務課(学務課)の仕事を紹介してきましたが、学生を直接サポートする以外にも大学職員として働いている人が多くいます。
- 総務関係・・・・大学運営や職員教員の人事に関する業務を行う
- 会計関係・・・・大学の会計・経理に関する業務を行う
- 研究関係・・・・大学教員が研究を行う環境整備や研究費獲得の支援を行う
- 施設関係・・・・大学生・教員が事故なく活動できるよう、施設維持を行う
- 教務関係・・・・大学教員と一緒に、学生の活動のサポートを行う
教務課以外の仕事にも興味を持った方はこちらの記事も参考にしてください。姉妹サイトで大学職員への転職を応援するサイト「ゆるふわ大学職員になろう」も運営しています。
まとめ:学務課・教務課は学生サポートを行う
大学の教務課・学務課の仕事内容について解説してきました。
大学の教務課・学務課は同じ意味で、「学生のサポートをする部署」です。
主に行っている仕事は、「入学・授業履修・成績・卒業・正規生の管理・非正規生の管理・資格取得・授業料・留学・就職・課外活動」に関する事務。
本サイトでは、大学のルールに関して発信していますので、他の記事も読んでいただけると嬉しいです。